ネーザルハイフロー(NHF)の設定と看護|役割と使い分けまでを解説
ネーザルハイフロー(NHF)は比較的新しい酸素デバイスの一つです。使いこなせれば呼吸不全に効果的なデバイスです。本記事では、設定数値の根拠から他デバイスとの使い分け、看護・管理の注意点などを解説します。
ネーザルハイフロー(NHF)とは?基本概念とデバイス比較
ネーザルハイフロー(高流量鼻カニュラ酸素療法)は、専用のカニュラを用いて高流量かつ高濃度の酸素を投与する治療法です。
ネーザルハイフロー(NHF)の特徴
酸素マスクやカヌラなど低用量の酸素療法器具では、換気パターンによって安定したFiO2が提供できず、かつ、投与できるFiO₂は50~60%程度が限界です。一方でNPPVやベンチュリーマスク(アクアサーム🄬等)は安定して高FiO₂を提供できますが、口を自由に使うことができません。
NHFは加温・加湿機能をつけることで、高流量かつ安定したFiO2を鼻カニュラで投与できることに強みがあります。
- 高流量投与:最大60 L/分まで設定可能
- 加温・加湿:上気道の粘膜絨毛のクリアランスを増強する
- 高濃度酸素:FiO2 0.21〜1.0(100%)を維持できる
- 快適な装用:口が自由で会話や経口摂取が可能
主な酸素デバイスとの比較表
臨床でよく使われる酸素デバイスごとの違いを整理しました。
| デバイス | 最高FiO2 | 流量範囲 | 食事 | 換気補助(CO2排出) | 臨床での主な使い分け |
|---|---|---|---|---|---|
| 鼻カニュラ | 約0.4 | 1〜6 L/分 | 可能 | なし | 軽度の低酸素血症 |
| リザーバーマスク | 約0.6〜0.8 | 10〜15 L/分 | 不可 | なし | 中等度〜重度の低酸素血症 |
| ベンチュリーマスク | 約0.24〜0.5 | 設定依存 | 不可 | なし | FiO2を一定に維持 |
| ネーザルハイフロー | 1.0 (100%) | 30〜60 L/分 | 可能 | 軽度(死腔流し) | 重度低酸素血症・経口管理の継続 |
| NPPV | 1.0 (100%) | 圧設定依存 | 不可 | あり(強力) | 換気補助が必要なCO2ナルコーシス等 |
ネーザルハイフローの外観
酸素・空気のブレンダーと加湿器がセットとなったものが一般的かと思います。そのほかにもAIRVO-2(エアボ)といった専用機器や、NPPVに付帯するハイフローセラピーモードなどがあります。

NHF
酸素と空気配管がないと使用できない

AIRVO-2
空気配管のみで使用可能。バッテリーを登載していれば、酸素ボンベを使用して移動も可能。
NHFの30L/分のフローがもたらす効果
NHFで設定する項目は「流量(フロー)」と「吸入酸素濃度(FiO2)」の2つのみです
【NHFの設定調整手順】
- 流量(Flow)を設定
- 基本は「30 L/分」 以上に設定する。
- 患者の不快感に応じて流量を調節する
- 吸入酸素濃度(FiO2)を設定
- 目標SpO2(例:90〜98%)に合わせて調整
- SpO2が低ければFiO2を上げ、高ければ下げる
なぜ流量設定は「最低30 L/分」必要なのか?
成人が息を吸う際、1秒間に約500mLの空気を吸い込みます。 これを1分間(60秒)に換算すると30L/分の空気を吸い込んでいる計算になります。
1分間に30 L/分以上のガスを流すことで、患者が吸い込む気体のすべてを機器からの管理されたガスにできるというわけです。 30 L/分未満では外気が混ざり、狙ったFiO2が維持できなくなります。
NHFに「できること」と「できないこと」
アセスメントを行う上で、NHFの強みと限界を正しく理解することが重要です。
注意したいのが、呼吸状態不良のままNHFで粘ってしまうことであり、NHFで呼吸状態が改善しないのであれば次の手(NPPVやIPPV)を考慮しなければなりません。
NHFに「できること」
- 解剖学的死腔の洗い流し(CO2ウォッシュアウト):気道内(約150mL)のガスを清浄な酸素に置き換えます。
- 呼吸仕事量の軽減:高流量により、患者が息を吸うエネルギーを軽減します。
- 軽度のPEEP効果:30〜50 L/分の流量で、1〜3 cmH2O程度の呼気終末陽圧がかかるとされています。
- 気道粘膜の保護:約37℃の十分な加温加湿により、気道粘膜の繊毛運動を維持します。
2. NHFに「できないこと」
- CO2の強制排出:NPPVや気管挿管のような強力な換気補助機能はありません。
- CO2ナルコーシスへの使用:換気低下による2型呼吸不全では、NPPVや人工呼吸器を選択する必要があります。
ネーザルハイフロー(NHF)管理のポイント
注意したい管理のポイントです。
適切な加温加湿の維持
NHFは高流量の空気を常に送るため加湿用水の消費は早くなります。
また、加湿器の電源・加湿温度設定のミスがあるとかえって不利益となるため、使用開始時・勤務交代時・定例時間で動作と設定の確認をします。
アラーム機能がない
加温・加湿器のアラームやAIVOなどの専用機器にはアラームがついているものがあります。しかし、ブレンダーが組まれたNHFでは基本的にアラームが鳴りません。
酸素流量低下や、カニューレ外れ、呼吸状態の変化はアラームでは気づけませんので、適切なモニターアラームの設定と呼吸フィジカルアセスメントが必要になります。
経口摂取時の注意
NHFは高流量で酸素と空気を送っています。
この高流量が患者さんに不快を与える要因にもなり、食事・飲水時は誤嚥に繋がる危険があります。嚥下状態を観察したうえで、一時的に流量を下げる検討も行いましょう。
鼻カニュレ装着時の注意
鼻カニュレにはサイズがあり、鼻腔径の2/3程度のものを選択します。
鼻腔径と比較して小さすぎては安定した流量が得られず、大きすぎると鼻腔を塞いでしまい呼吸がしにくくなります。
また気管切開孔にとりつけられるアタッチメントもあり、気管切開後にも使用できます。


装着は鼻腔に合わせつつ、紐を適切な長さに調整し頭頂部で固定します。


装着にあたって皮膚が脆弱であれば、鼻下や頬に褥瘡形成する可能性があります。クッション材などを用いて除圧しつつ、定期的に外して皮膚状態を観察します。
まとめ
ネーザルハイフロー(NHF)は、高流量かつ高濃度の酸素を加温加湿して投与できる、呼吸不全管理において非常に有効なデバイスです。
今回のポイント
- 基本設定: 流量は「30 L/分以上」 を基本に、目標 SPO₂に応じて FiO₂ を調整する。
- NHFの強み: 解剖学的死腔の洗い流し(CO₂ウォッシュアウト)、気道粘膜の保護、会話や経口摂取が可能などのメリットがある。
- 限界と注意点: 強力な換気補助(CO₂の強制排出)はできない。また、アラーム機能が限られているため、加温加湿の水分管理や呼吸状態のアセスメントが必須。
NHF使用中に呼吸状態の改善が見られない場合は、遅れずにNPPVや気管挿管(IPPV)への切り替えを検討することが重要です。デバイスの特徴と限界を正しく理解し、日々の看護・点検に活かしていきましょう!
Youtube動画紹介
呼吸器ドクターひつじさんの動画:【30分で初心者を卒業】ネーザルハイフローの完全講義
うたたね看護師さんの動画い:新人看護師から知っておきたいネーザルハイフローの看護と管理について


