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人工呼吸器ケア

人工呼吸器からの離脱と抜管

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人工呼吸器離脱へ向けて

人工呼吸器早期離脱へ向けては、ABCDEFGHバンドルという概念があり、複数のケアを同時に(束として)実施していくことが言われています。バンドルの一部ではありますが、離脱へ向けてSAT(鎮静覚醒トライアル)とSBT(呼吸器離脱トライアル)を毎日評価していくことが重要です。

SAT(鎮静覚醒トライアル)

SATとは鎮静覚醒トライアルのことで一日一回は鎮静剤を減らすか中止し鎮静からの離脱を図ります。

SAT実施手順
SAT開始基準の評価 
以下の状態に該当しないことを確認する 
□痙攣、アルコール離脱症状のための鎮静薬を持続投与中 
□興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している 
□筋弛緩薬を使用している 
□24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候 
□頭蓋内圧の上昇 低体温が持続しており、復温ができていない 
SAT成功基準の評価 
1.鎮静薬の投与を減量、もしくは中断する。
2.中止から30分経過後、SAT成功基準を満たしているかを評価する。 RASSとして-1~0   
3.鎮静薬を中止して30分以上過ぎても、以下の状態とならない 
□興奮状態 持続的な不安状態 
□鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない 
□頻呼吸(呼吸回数≧35回/分、5分間以上) 
□SpO2≦90%が持続して対応が必要な場合
□新たな不整脈の出現
□人工呼吸器(グラフィックモニター、実測値)の変動                                         
SAT手順

SATが不成功となる要因としては不穏状態であることが多いと感じます。また、鎮静剤を減らす時間はマンパワーが取られるため積極的には行われないかもしれません。

鎮静の管理としては基本的にはRASSで評価すると0~-1程度の浅い鎮静で管理することが推奨されます。そのためにはせん妄を予防するような環境の配慮や患者さんへの説明が重要です。

SBT(呼吸器離脱トライアル)

SBTとは呼吸器離脱トライアルのことで、自発呼吸モードへの変更やTピースへ変更し観察を行います。

SBT実施手順
SBT開始基準の評価
以下の基準①~⑤の全てを満たしているかを評価
①酸素化が十分である
□FIO2≦0.5かつPEEP≦8cmH2OのもとでSpO2>90%
□BGA値に異常がない
② 血行動態が安定している
□急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない
□心拍数≦140回/分
□昇圧薬に依存していない (DOA≦5μg/kg/min、DOB≦5μg/kg/min、NAD≦0.05μg/kg/min)         
③ 十分な吸気努力がある
□1回換気量>5mL/kg
□分時換気量<15L/min
□Rapid shallow breathing index(1分間の呼吸回数/1回換気量)<105/min/L
□呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
④ 異常呼吸パターンを認めない
□呼吸補助筋の過剰な使用がない
□シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
⑤ 全身状態が安定している
□発熱がない
□重篤な電解質異常が認めない
□重篤な貧血を認めない
□重篤な体液過剰を認めない   
SBT成功基準評価
以下の基準全てを満たしているかを評価
□呼吸回数<30回/分
□心拍数<140回/分、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
□過度の血圧上昇を認めない
□以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する)
1.高度な呼吸補助筋の使用
2.シーソー呼吸(奇異性呼吸)
3.冷汗
4.重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態      
SBT手順

SBTの過程では呼吸器のサポートを減らすことで呼吸・循環への影響が出現することが多いです。酸素化だけでなく、ETCO₂・PaCO₂の変動にも注意したいところです。

抜管時の観察ポイント

抜管時の準備

  • カフエアーを抜くためのシリンジ
  • 気管内吸引の準備
  • 抜管後の酸素投与デバイス(酸素マスクやNHFなど)
  • バックバルブマスク
  • 必要時テープの剥離剤
  • 救急カート(再挿管の準備)
  • 胃管があれば胃内容物は吸引しておく
  • 口腔ケアを行っておく(誤嚥防止)
  • 気管内吸引、カフ上部吸引、口鼻腔吸引を行っておく

抜管後の観察

抜管後の呼吸変化は5分以内に起こりやすく、喉頭浮腫による気道閉塞は30分以内に出現することが多いため観察を密にします。

たとえ30分以内に呼吸の変動はなくても、呼吸筋疲労によるCO₂貯留など10時間以上経過した後呼吸状態が悪化する場合もありますので注意します。

観察の項目として下記に示します。

<呼吸>

  • 頻呼吸、努力呼吸となっていないか
  • 気道狭窄音(ストライダー)、喘鳴はないか
  • 呼吸音の左右差はないか
  • 舌根沈下はないか
  • 痰の喀出は行えているか、痰の量が多すぎないか
  • SPO₂の低下、チアノーゼの出現はないか

<循環>

  • 血圧の上昇や低下はないか
  • 20%を超える脈拍の変動はないか
  • 不整脈の出現はないか

<意識>

  • 鎮静剤より覚醒している状態か
  • 従命動作が行えるか

呼吸器管理に関して他の記事もあわせて参考にしていただけると幸いです。

他サイトリンクを貼ります。

コキュトレ 人工呼吸器
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ABOUT ME
azuki
某大学病院の一般病棟・集中治療室で十数年の勤務経験あり。特定行為に係る研修制度を履修。休日は子どもたち3人と遊んでいます。 このブログでは広く浅くをパッと調べる目的で始めました。休憩時間や通勤時間にでも見てもらえるツールになればと、不定期更新を続けたいと思っています。 また、今やネットサイトやYouTubeからでも手軽に勉強できる時代になりました。分かりやすいと思ったものはどんどん紹介していこうと思います。

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