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検査関連

検査データの読み方③生化学検査(酵素代謝産物)

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糖質と代謝産物

正常値

項目基準値
血糖(Glu)80〜110mg/dl以下(空腹時)
HbA1c 6.5%未満 1〜2ヶ月の血糖値を反映している
糖質基準値

血糖値の調整機構

体内の血糖は以下の内分泌の作用を受けて調節されます。

血糖の動き放出される物質作用
血糖降下作用インスリン分泌同化促進、異化抑制
血糖上昇作用グルカゴン分泌肝グリコーゲン分解、糖新生促進
コルチゾル分泌糖新生促進mグルカゴンへの許容作用
アドレナリン分泌肝グリコーゲン分解、末梢でのGlu利用抑制
インスリン分泌抑制、グルカゴン分泌亢進
甲状腺ホルモン肝グリコーゲン分解、糖新生促進
血糖とホルモンの働き

低血糖時の症状

空腹時血糖が70mg/dl以下になると、発汗、手指振戦、動悸、頻脈、空腹感などから自覚症状が出現します。低くなるにつれ傾眠となり、20mg/dl以下の重度の低血糖では意識障害をきたし、時に後遺症を残します

高血糖時の症状

高血糖では300mg/dl以上と高値でないと自覚症状を感じにくく、口渇や多尿、倦怠感から始まり、意識障害をきたします。

ケトアシドーシス

高血糖とケトン体の増加によるアシドーシスをきたした状態です。インスリン分泌または感受性の低下により、Gluが体内で利用できていない事が問題となります。(高血糖が問題ではない)エネルギー源に脂肪が分解される過程でケトン体が発生します。

肝・胆道系・膵酵素、ビリルビン

正常値

項目基準値
総ビリルビン(T-Bil)0.3~1.2mg/dl
間接ビリルビン(D-Bil)0.1~0.5mg/dl
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)8~33IU/L
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)4~45IU/L
ALP(アルカリ性フォスファターゼ)80~260IU/L
γGTP(γグルタミルトランスペプチターゼ)男性:8~50IU/L 女性:6~30IU/L
ChE(コリンエステラーゼ)120~460IU/L
アミラーゼ(Amy)44~127IU/L
リパーゼ9~55IU/L
アンモニア(NH₃)12~66µg/dl
肝・胆道系・膵酵素、ビリルビン基準値

ビリルビン

肝臓の代謝障害、赤血球破壊によるビリルビン放出、胆汁排泄障害により上昇します。

総ビリルビン値が2~3mg/dl以上になると、皮膚や眼球結膜などに黄染が見られるようになります。(顕性黄疸)

直接・間接ビリルビンのどちらが上昇しているかにより原因が異なります。

D-Bil>I-Bil 閉塞性黄疸

I-Bil>D-Bil 溶血性黄疸

肝臓系酵素

ASTとALT

ASTとALTは肝臓だけではなく、心筋や骨格筋、膵臓など多くの組織にあります。その中でも肝臓にある割合が多く、ASTとALTが上昇している場合は肝細胞の破壊亢進を疑います。中でもALTは肝臓に最も多く分布しており、ALT上昇は肝障害を強く疑います

AST/ALT比

  • AST/ALT比>1(ASTの比率が高い):急性肝炎、アルコール性脂肪肝、溶血、鬱血性心不全
  • AST/ALT比<1(ASTの比率が低い):慢性の肝障害(慢性肝炎)が疑われます。

ALP

胆汁の排泄障害があるときに上昇し、γ-GTPと並行して変動します。

  • 上昇:妊娠、骨芽細胞増殖性疾患、肝外胆道閉塞、肝臓病変
  • 低下:慢性腎炎、甲状腺機能低下症

γ-GTP

胆汁の逆流、腫瘍などによる合成・産生促進により上昇します。

  • 軽微~中程度の上昇:閉塞性黄疸、肝障害、肝癌、アルコール性肝障害、肝炎
  • 高度な上昇:胆汁うっ滞型の肝障害、薬剤性の障害

ChE

蛋白合成能に左右され、アルブミン値と並行して変動します。

脂肪肝では上昇することもありますが、肝疾患では低下します。

アンモニア

肝障害による尿素合成が低下すると血中アンモニアが上昇しやがて昏睡を起こします。(肝性脳症)

アンモニア上昇時は以下に注意しましょう

  • 採血後は熱で分解されるため冷却保管もしくは即時検査提出が必要
  • 便秘でアンモニア生成と吸収促進するため排便コントロールが必要
  • 肝性脳症により不穏な状況が出現するためベッドサイドの安全配慮が必要

膵臓系酵素(アミラーゼとリパーゼ)

アミラーゼは唾液腺と膵臓で分泌され、リパーゼは膵液中に存在します。

どちらとも膵炎、膵癌、膵管閉塞など膵臓の障害で上昇しますが、アミラーゼは耳下腺炎、腎不全、肝硬変などでも上昇するため、リパーゼのほうが診断には有効です。(特異度が高い)

腎機能関連の代謝産物

正常値

項目 基準値
血液尿素窒素(BUN)8~20mg/dl
クレアチニン(Cre)男性:0.7~1.2mg/dl 女性:0.6~1.0mg/dl
eGFR(推算糸球体ろ過量)100ml
腎機能採血データ基準値

BUNの増加

上昇する要因は以下の通りです。

  • 蛋白質の異化亢進:術後、腫瘍、甲状腺機能亢進等
  • 蛋白質摂取の増加
  • 消化管出血
  • 腎血流量低下
  • 腎障害

BUN上昇により掻痒感や悪心、嘔吐を来すこともあるため、症状に応じて緩和に努めます。

クレアチニン

ほとんどが筋肉に存在し、腎臓以外の影響をほぼ受けないため腎機能の指標として優れます

クレアチニンクリアランス(Ccr) 基準値:70~130ml/分

腎臓のろ過機能をどれくらいあるか調べる項目で、血清クレアチニンと尿中クレアチニンを測定することで知ることができる検査値です。

BUN/Cre比

BUNとCreの特性から、両者の比率を計算して腎機能の指標や鑑別を行います

  • BUN/Cre比 10以上の場合:蛋白過剰、消化管出血、脱水、ショック
  • BUN/Cre比 10以下の場合:蛋白質摂取減少、重症肝不全

eGFR

年齢と血清クレアチニン値から求めることができます。

グレード検査値備考
G1GFR≧90腎臓機能は正常または高値
G290>GFR≧60腎臓機能は正常または軽度に低下している
G3a60>GFR≧45腎臓機能は軽度~中等度に低下している
G3b45>GFR≧30腎臓機能は中等度~高度に低下している
G430>GFR≧15腎臓機能は高度に低下している
G515>GFR透析治療などを要する直前の状態
eGFRのグレード分類

心臓・骨格筋系酵素

正常値

項目基準値
CK(クレアチニンキナーゼ)男性:43~272IU/L 女性:30~165IU/L
トロポニンT陰性
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)18.4pg/ml以下
心・骨格筋系酵素基準値

CK

CKは骨格筋、脳、心筋に多く含まれ、臓器の障害により血中に放出されます。

CK-MB

CK-MBは心筋に由来するCKを測定する項目で、この項目が高値だと心筋梗塞、心嚢炎などを鑑別することができます.

CK-BB

CK-BBは脳に由来するCKを測定します。こちらの項目が高値だと脳梗塞や悪性腫瘍を疑います。

心筋梗塞時のCKの推移

心筋梗塞後CKが上昇して低下するのは改善したのではなく、虚血が示唆されます。(4~6時間で上昇し12時間でピークとなる)大きいダメージで大きく上がってゆっくり下がり、小さいダメージで小さく上がってすぐさがります。CKが上昇し続けるのは虚血ではないと言えます

トロポニンT

心筋壊死を反映する心筋マーカーです。心筋梗塞発症後3~6時間で上昇し、2~3週間後まで検出されます。

BNP

心室負荷、心筋肥大、心筋虚血時に分泌が亢進します。心不全の重症度や治療の効果判定のために検査されることが多いです。

  • 400pg/ml 以上:95%で心原性心不全が存在する
  • 100〜400pg/ml:左室機能不全や肺梗塞、非心原性心不全を疑う
  • 100pg/ml以下:心不全は考えにくく、加齢の要素も考慮する

免疫系

正常値

項目基準値
C反応性たんぱく(CRP)0.3mg/dl以下
プロカルシトニン(PCT)基準0.05ng/ml以下
β-Dグルカン11〜20pg/ml以下
免疫系採血データ基準値

CRP

CRPは少なくとも炎症から6時間以上でないと上昇しません。48時間かけて上昇し、19時間かけて減少しますが、CRP上昇は手術や膠原病、リウマチなどでも上昇するためCRP単体では感染症があると判断はできません。

プロカルシトニン

プロカルシトニンは好中球の上昇を反映します。

好中球は細菌感染で上昇するため、細菌性の感染を鑑別したいときに検査されます。2.0ng/mlを超えると重症感染症と判断されます。

β-Dグルカン

β-Dグルカンは真菌細胞を構成する成分で、真菌感染症の鑑別をしたいときに検査されます

栄養関連

正常値

項目基準値
TP(総蛋白)6.5~8.2g/dl
アルブミン(Alb)4.0~5.0g/dl
栄養関連採血データ基準値

TP

TPは血清中の蛋白質を測定する項目であり、その中にアルブミンやグロブリンが含まれます。

上昇では脱水による相対的減少もしくは、感染や骨髄腫によるグロブリン増加が考えられます。

Alb

アルブミンは約3週間前の栄養状態を表していますアルブミン値が3.5g/dlを下回ると褥瘡発生リスクが急増しますAlb低下は膠質浸透圧低下を意味します。(血管内に水分を保持できなくなる)

血漿分画製剤のアルブミンが投与されることがありますが、血清アルブミン値上昇のために使用されているのではなく、血管内のボリューム負荷のために使用されます。(栄養にはならない)

※プレアルブミン 基準値:22~40mg/dl

半減期が24時間と短く、栄養状態をよりタイムリーに知りたい場合に検査されます。

TP・Alb減少の要因

減少する要因は以下の通りです。

  • 蛋白尿
  • 胸水・腹水などへの漏出
  • アルブミンの合成阻害(肝障害など)
  • 腫瘍や重症感染、甲状腺機能亢進による異化亢進

おわりに

検査値の各酵素や代謝産物についてよく目にする項目をまとめました。

基準値は検査法、文献、施設により違ってくるものですが、細かい基準値の差より臨床上問題となる値かを考えると良いかと思います。

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ABOUT ME
azuki
某大学病院の一般病棟・集中治療室で十数年の勤務経験あり。特定行為に係る研修制度を履修。休日は子どもたち3人と遊んでいます。 このブログでは広く浅くをパッと調べる目的で始めました。休憩時間や通勤時間にでも見てもらえるツールになればと、不定期更新を続けたいと思っています。 また、今やネットサイトやYouTubeからでも手軽に勉強できる時代になりました。分かりやすいと思ったものはどんどん紹介していこうと思います。

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