生化学検査
生化学検査とは、血液を遠心分離させて無形成分(血清)を検査するものです。
電解質
電解質の正常値
項目 | 基準値 |
ナトリウム(Na) | 136〜145mEq/L |
カリウム(K) | 3.6〜4.8mEq/L |
クロール(Cl) | 96〜108mEq/L |
カルシウム(Ca) | 8.7〜10.3mg/dL |
※mEqの読み方は〜メックとの言い方もありますが、ミリイクイバレントと読みます。
ナトリウム(Na)
Naは体内の水分のバランスを保つ大きな役割があります。
高Naとなる要因
- 脱水(水分摂取不足・水分喪失)
- 塩分の過剰投与・摂取
- 利尿剤の投与
高Naでは熱中症や尿崩症など脱水を来たす疾患や、クッシング症候群・原発性アルドステロン症等で起こりえます。高齢者など水分を摂取していないことでも目にすることがあります。症状としては口渇感、頭痛、嘔吐、痙攣、倦怠感などで、意識障害をきたすことがあります。
低Naとなる要因
- 水分の過剰摂取
- 塩分摂取不足
- Naの喪失(嘔吐や下痢など)
低Naでは心不全や腎不全など利尿の低下によってうっ血をきたす疾患や、ネフローゼ症候群・中枢性塩類喪失症候群(SIADH)など腎・内分泌疾患が影響していることもあります。症状としては吐気、疲労感、頭痛、倦怠感などで、低Naでも意識障害をきたすおそれがあります。
低Naの補正
Na濃度を急激に補正した場合、脱髄性脳症を引き起こす恐れがあります。そのためNaの上昇を1時間に0.5mEq/Lを上限として緩徐に補正する必要があります。
カリウム(K)
カリウムは細胞内に多くが分布しており、腎臓より排泄されます。
高Kとなる要因
- 過剰投与(カリウム製剤・輸血、果物など)
- 細胞内からの放出(挫滅など細胞膜が壊れている状態)
- カリウム排泄の低下
高Kは腎不全・低アルドステロン症などの代謝性疾患、インスリン欠乏による細胞内取り込み障害などによって生じます。高K血症では心筋伝達にも異常を来たし、6.0mEq/Lを超えると心電図変化をきたすようになり、高度の高Kによって致死性不整脈を引き起こします。症状は不整脈の他に嘔気、嘔吐、しびれ感、知覚過敏、脱力感などをきたします。
GI療法
グルコース・インスリン療法の略で、インスリンによる糖代謝の過程でカリウムが細胞内へ取り込まれる作用を利用して、ブドウ糖液にインスリンを混注して投与します。
低Kとなる要因
- カリウムの摂取不足
- カリウムの喪失
- 細胞内へのカリウム移動
低Kは利尿の亢進による排泄過剰や、嘔吐・下痢などによる喪失により生じます。症状は筋力低下や筋肉痛、嘔気、嘔吐、痙攣や重度になると麻痺症状をきたします。
低Kの補正
急激なKの補正は不整脈をきたす恐れがあります。添付文書に沿った速度でカリウム製剤を投与します。末梢:濃度20mEq/L以下、速度20mEq/時以下、中心静脈:濃度40mEq/L以下、速度40mEq/時以下
クロール(Cl)
多くはNaとともに存在し、水分やpHの調節に関わっています。
高値となる要因
過換気、脱水、腎不全により生じます。脱水の際に生理食塩水やリンゲル液などを大量に輸液する事でもClが上昇し、希釈性のアシドーシスをきたします。
低値となる要因
嘔吐、下痢、腎障害などで生じます。
カルシウム(Ca)
カルシウムは骨形成だけでなく、神経伝達の際にも必要となる電解質です。
高値となる要因
副甲状腺機能亢進症、骨破壊がある場合などで上昇し、症状は便秘、嘔気、多尿に加えて、重度になると、意識・情動障害、脱力、心電図異常をきたします。また、腎結石の形成する要因になります。
低値となる要因
副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、低マグネシウム血症、膵炎などの疾患で低下し、カルシウム摂取不足でも生じます。症状は知覚異常、筋肉痛、テタニー、不整脈が起こり、長期だと記憶障害、意識混濁、うつ、幻覚などの症状が出現します。
おわりに
検査データの電解質についてでしたが、普段よく目にする項目についてをあげさせていただきました。
基準値は検査法、文献、施設により違ってくるものですが、細かい基準値の差より臨床上問題となる値であるかを考えると良いかと思います。
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