動脈ラインの管理と波形の見方
今回は集中治療室では必ず使用するAラインの管理についてです。
動脈ライン(Aライン)の目的は、持続的に血圧が測定できることと動脈血採血ができることです。
Aラインの構造
動脈ラインの構造は、動脈圧による逆血を防ぐためヘパリン生食の輸液ボトルを加圧バックで加圧し、専用のトランスデューサー付きのラインを使用して患者側に流れます。
ラインの穿刺にはインサイトやサーフローといった静脈ライン留置に使用する留置針で穿刺をしますが、動脈ライン専用のアーテリアルラインキットがあったり、一時的に動脈シースを動脈ラインとして使用することがあります。
末梢ラインと違って、直接動脈に流れるためより感染源となりやすく、空気混入は肺塞栓につながるため動脈ラインには空気が混入しないように細心の注意が必要です。
Aラインのセッティング
Aライン管理で最も基本的なのが、トランスデューサーのセッティングです。右心房の高さにトランデューサーの高さをあわせて大気圧に解放し、モニター画面より0点校正操作をすることで基準点を設定します。
基準の位置(0点)
右心房の高さ、すなわち「第4肋間腔の腋窩正中線」に合わせます 。施設により水平儀やレーザーポインターで位置を確認します。
トランスデューサーの位置は10cm変わるだけで、血圧表示は7.5mmHgも変動します 。
- トランスデューサーが低い ➡ 血圧は高く表示される
- トランスデューサーが高い ➡ 血圧は低く表示される

0点校正のタイミング
体位変換やリハビリなどで患者さんが動いた後は、必ず位置を確認し、必要に応じて0点校正(大気圧を教える作業)を行いましょう 。
Aライン波形のモニタリング
基本波形
基本的な波形はHRに合わせて動脈圧波形が上向きに表示されます。
波形の立ち上がりは心収縮を表し、大動脈弁が閉じる(ディクロティックノッチ)ところで凹みとして圧の変化が表示されます。大動脈弁閉鎖を起点に左側は一回拍出量を示し、右側は末梢血管抵抗を表します。

ダンピング波形
ダンピング波形では何らかの原因で正しく動脈波形が出ていないときに現れます。
- アンダーダンピング(オーバーシュート): 波形の先が尖り、収縮期血圧が過大評価されます 。原因はエアーの混入、チューブが長すぎること、頻脈、動脈硬化などです 。
- オーバーダンピング(なまり): 波形がなだらかになり、収縮期血圧が低く表示されます 。回路内の空気や血栓、カテーテルの折れ、加圧バックの圧力低下が主な原因です 。
これらを評価するには、「フラッシュテスト」が有効です。300mmHgの圧力でフラッシュした後の振動が1.5〜2回なら正常、それ未満ならオーバーダンピングと判断します 。

動脈波形の呼吸性変動の有無
動脈波形が呼吸性に上下している場合は、血管内脱水(ボリュームロス)となっている可能性があります。一つの指標としてアセスメントに役立てるとよいでしょう。
留置部位ごとの注意点
挿入部位によってリスクがあります。
- 橈骨動脈(第一選択): 手首を動かすためカテーテルの屈曲や脱落が起こりやすいです。必要に応じてシーネ固定を検討します 。
- 上腕動脈: 神経が近いため、神経損傷に注意が必要です 。肘関節を屈曲してしまうとカテーテルのキンクや脱落が起こりやすく、シーネをすると肘関節が拘束されてしまいます。
- 足背動脈: 下肢への挿入は基本的に選択されません。血流障害や神経障害のリスクが高くなるため丁寧な観察が必要です。
共通の合併症: 痛み、腫れ、血栓、塞栓、血腫、四肢虚血、感染など 。
特に「指先がピリピリする」「痺れる」といった症状は末梢神経障害を疑います。
Aライン挿入と管理
集中治療病床において、動脈ラインは看護必要度の取得に最低限必要かつ、SOFAスコア計算に動脈血ガス分析値が必要になるため必須といえます。動脈ラインが不要になったタイミングは集中治療管理が不要になる時期とも言えます。
処置としては動脈に留置針を挿入するだけなので手技は単純なのですが、これが結構難しく、出血や仮性動脈瘤などの合併症のリスクと深く穿刺するため痛みが強く伴います。
ラインの組み立てで注意することは、フロートラックセンサーを使用するかの確認と、ライン内に気泡が混入しないように注意します。HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)が疑われる場合は低分子ヘパリン以外の抗凝固剤を混注する必要があります。
Aラインの固定と誤抜去予防
動脈ライン挿入後は波形がなまらないよう、シーネで固定する必要があります。また、動脈ラインの誤抜去は適切なモニタリングができなくなるだけではなく、出血や血腫による障害を来す恐れがあるため刺入部の観察は丁寧に行います。
誤抜去の理由としては、ドレッシング材の剥がれとライン整理不足によることがほとんどであり、発汗や師入部の滲出でドレッシング材の粘着が弱くなっている場合は早急に包交を実施します。
その他注意事項
- トランスデューサーは96時間(4日)毎の交換が推奨されます 。カテーテルの交換時期を含めて施設の基準に従いましょう。
- シーネの固定は褥瘡発生のリスクを高めます。必ず外して観察してください。またシーネには金属が含まれる場合があるのでMRI撮影の際は注意してください。
- Aラインから薬剤を投与するのは禁忌です。看護師は動注できませんが、医師であっても動脈ラインから薬剤を入れることはまずありません。ラインがないからといってたとえばアドレナリンを注入しようものなら大変なことになります。(経験談)
- 不要になったら、感染源になる前に早期抜去を検討しましょう。
始業時の観察項目
集中治療中の管理を行う上で、始業時のライン点検は基本です。以下の項目を点検します。
- 0点校正とトランスデューサーの高さは適切か?
- 加圧バックが300mmHgで膨らんでいるか?
- ヘパリン生食の残量は十分か?
- 回路内に気泡(エアー)や血栓はないか?
- カテーテルの屈曲や活栓の向きに問題はないか?
- マンシェット(非観血血圧)と測定値を比較し、乖離の程度を把握しているか?
- 刺入部の異常はないか?
まとめ
Aラインは、正しく管理できてこそ真価を発揮します。波形の違和感に気づき、根拠を持ったアセスメントができるように努めましょう。




