勤務表の裏側
ここでは看護師のシフトについて触れたいと思います。
看護師が読むベストセラーは勤務表といえます。希望休が通っているか、連休があるか、誰と夜勤なのか、リーダーは誰か、いつシフトが発表されるのかなどこのシフトによってワークライフバランスは左右されます。
実際にシフトを作成する立場になり難しさを感じています。そんな勤務表作成の裏側を少し語りたいと思います。
なぜシフト作成が難しいのか
シフト作成が難しい理由は縛りが多いからです。
- 勤務者が多いが余剰な人員はいない
- 夜勤や変則勤務による複雑な勤務形態
- 労働基準法による制限と医療法による配置基準の制約がある
- スキルレベルが偏らないように作成する必要がある
- 公平性を保たなければならない
- 希望休やスタッフ事情、研修などの制約が多い
その他、施設・部署の特徴に合わせて勤務を考慮する必要があります。
シフト作成は管理者にとってかなり時間を要する作業なのです。
シフト作成のルール
シフト作成には絶対的に守らなければならないルールと努力義務みたいなものがあります。
絶対に遵守しなければならないこと(法的義務)
これらは労働基準法や医療法、労働安全衛生法に基づき、違反すると行政指導や罰則の対象となる事項です。
労働基準法による労働時間・休日の規定は以下です。
- 法定労働時間:休憩時間を除き、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはいけない。
- 法定休日の確保: 毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければいけない 。
しかし、残業かつ夜勤がある病院での勤務ではこの規定を超えてしまいます。その場合、使用者は労働者の代表と36協定(労使協定)を定めて労働基準監督所に届け出る必要があります。
この協定では単に「残業代を払えばいくらでも働かせてよい」ということではなく、「あらかじめ決めた上限時間を厳守し、かつスタッフの健康を害さない範囲に収めること」を目的に範囲を定めます。
36協定で定めるべき「範囲」の基本
- 原則として1日8時間・1週40時間(10人未満の保健衛生業などは週44時間)を超えて労働させる時間を、協定で具体的に定める。
- 協定は必ず書面で締結し、届け出が必要。この届け出た時間を1分でも超えて働かせると労働基準法違反となる。
- 労働時間の範囲は一般的には月45時間・年360時間が基準とされている。
- 労使で定める延長時間は、厚生労働省の「時間外労働の限度に関する基準」に適合させる必要がある
- 割増賃金率の引き上げライン(月60時間)が設けられている。
- 日本看護協会は、夜勤専従で働く場合の夜勤時間数について、月144時間以内とすることを一つの基準として提案している。
あくまで範囲の話なので、例えば10連勤があったとしても休日や勤務時間の数が範囲内であれば法的な違反はありません。
医療法に基づく人員配置基準
人員配置基準の維持: 医療法に基づき、病院の区分や病床数に応じた看護師・准看護師の必要人数を確保してシフトを組む必要があります。
医療法では一般病棟で患者3名に対して1名の看護職員の配置が義務付けられています。
60床ある病棟であれば、看護職員は20名(師長なども含む)の配置が必要です。
この基準は最低ラインであり、この先に診療報酬に基づく人員配置基準が設けられています。この基準に満たないと監査で指摘された場合は、最悪億単位の返金命令が課せられることがあります。
| 病棟 | 配置の目安 | 特徴 |
| 集中治療室 | 常時2:1 | 休憩時間も含めて常に患者2名に対して1名の配置が必要 |
| 急性期一般病床 | 7:1 | 一定期間の中で患者7名に対して1名の配置が必要。そのため夜勤の受け持ちは7名以上になることがある |
| 地域包括病床など | 13:1 | |
| 療養病床など | 20:1〜 | |
| 精神科病床 | 15:1〜 |
上記配置の目安は診療報酬の改定により変動することと、管理料の定める規定が細かくあり要件を満たす配置が必要です。自部署がどの管理料を届け出ているかを知る必要があります。
その他法律による規定
- 年次有給休暇の付与: 労働者が希望する日に与えるのが原則であり、事業の正常な運営を妨げる場合(時季変更権)を除き、拒否することはできない。
- 母性保護規定の遵守: 妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働、深夜業を行わせてはいけない。また、産後8週間(本人が請求し医師が認めた場合は6週間)は就業させてはいけないなど。
- 年次有給休暇の付与:勤続6ヶ月+出勤8割以上で付与。年5日は取得義務
これら法律の次に就業規則に則ったシフト作成をしていきます。
日本看護協会が推奨する規定(勤務編成の基準)
日本看護協会は「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」において、健康と安全を守るための11の基準を提案しています。これらは法的拘束力はありませんが、自主的な改善目標として推奨されています 。
- 勤務間隔(インターバル)を 勤務終了から次の勤務開始までを11時間以上空けること。
- 1回の勤務の拘束時間は13時間以内とすることが望ましい。
- 3交代制の場合、夜勤回数は月8回以内を基本とする。
- 夜勤の連続は2回(2連続)までにする(準深準深) 。
- 連続して働く日数は5日以内とする。
- 夜勤の途中では連続した仮眠時間を設定する。
- 夜勤後の休息は2回連続夜勤の後はおおむね48時間以上、1回の夜勤後も24時間以上の休息を確保することが望ましい。
- シフトの順序は、日勤→準夜→深夜のように、開始時刻が後ろにずれていく「正循環」を原則とする。
- 少なくとも月に1回は、土日ともに夜勤のない休日を設ける。
- 早出の始業時刻は、7時より前にならないよう配慮する。
これらの基準は、すべてを満たす必要はありませんが、スタッフのニーズや施設の状況に合わせて優先順位を決め、可能な範囲で取り組むことが求められています 。
研修やスタッフによる制約
研修や委員会、スタッフの希望休によってもシフト作成に制約を受けます。
注意点としては研修や委員会の予定は1日に集中させないことです。
またスタッフと勤務作成のルールやスタンスを共有することが必要です。中には家庭の事情で特定の休みが必要な場合もあるでしょう。時短勤務になることもあります。その場合は周囲のスタッフに説明して理解を得るよう努めなければ、不公平感をスタッフに感じさせてしまいます。
スキルレベルを均一化する
診療報酬上の看護職員の配置は新人でもベテランでも数は1人です。
その日のシフトにはリーダーがいて、ベテランがいて、呼吸器が受け持てる人がいてなどスキルレベルが偏らないように調整が必須です。
その他、教育が進むように新人とプリセプターを同一勤務にするとか、おつぼね看護師が同一勤務にいないようにするなどの配慮も必要になります。
勤務表作成のコツ
コツとはしましたが、それほど得意ではないです。参考までに。。。
客観的なルールの確立
不公平感をなくすためには、まず全員が守るべき共通の枠組みを作ることが不可欠です。
- 1か月あたりに提出できる希望休の個数を明確に定めます 。
- 毎月の締め切り日を固定し、周知を徹底します 。
- 年末年始や大型連休など、希望が重なりやすい時期については、別途特別なルール(例:最大○日まで、交代制など)を設けます 。
全員の希望を100%叶えるのが難しい場合、どのような基準で優先するかをあらかじめ決めておきます。
- 冠婚葬祭や教育機会: 結婚式、法事、研修、試験など、日程の変更が困難な行事を優先する基準を作ります 。
- 「お互いさま」のインセンティブ: 普段、土日や夜勤の負担を多く引き受けているスタッフが週末休みを希望した際、優先的に取得できるようにする配慮も有効です 。
本来は有給休暇の申請があった場合、拒否することなく取得させるのが労働者の権利(有給取得日を変更してもらうのは問題なし)ですが、医療現場では急な有給取得は別の休みのスタッフを出勤させるなどの調整が必要になるためタブーとする意識があります。また、本人の同意なくシフト作成時に有給を使うことも本来は禁止ですが、有給が消費されにくい看護業界では捨てるなら使ってもらえたほうがマシといった意識が高く問題になることはほとんどありません。
ほとんどの場合は周囲の状況に配慮して希望休や有給が申請されますが、中には自身の権利を優先的に主張するスタッフもいるためルール作りや理解を得るためのコミュニケーションが不可欠です。
管理者のほとんどは希望する日に休みをつけてあげたい気持ちはありますが、現在の診療報酬では病院だと満床フル回転でやっと黒字になる状況なため、スタッフの希望を最優先するのは不可能です。
制約のあるところから埋めていく
勤務表を埋めていくにあたって、夜勤や研修日、希望休み日、リーダーの数など制約があるところを先に埋めておくとスムーズです。
ある程度作成したところで、平均化するために動かせるスタッフを残しておき調整するべきと思っています。
勤務のパターン化をうまく作成して、形で埋めていくとスムーズに作成できるのではないかと思います。
予測したシフト作成
急な休みや業務の忙しさによる負担を減らすために予測してシフトを組む必要があります。
手術日や季節、スタッフ同士の関係性の変化やスタッフの健康面を考慮して勤務が薄くならないようにあらじめ作成すべきです。
さらにもし休みが出てしまったとしてもスタッフの勤務が交代できるようにシフトが作成できるとベストでしょう。
おわりに
シフトに関してはスタッフが不満を持ちやすいところであり、双方に理解を得られるように努める必要があります。
シフトの組み方によっては健康状態の悪化や医療安全的なリスクにもなります。この業界御存知の通り5日勤はタブーとされます。一日の密度が濃いので疲労の蓄積が段違いです。同じ看護師でもスタッフとリーダーと管理者の5日勤は体感する疲労が違いすぎます。また深夜→準夜、日勤→準夜など生活リズムが極端に崩れる勤務も避けるべきです。
近年は医療DXの発展により、自動勤務表作成システムが導入されているところも多いと思います。施設によっては制約が多すぎてうまく導入できないところもあるかと思います。(所属施設では勤務形態が50以上ある超複雑な勤務形態のためトライアルしましたが使い物になりませんでした。)今後はAIでできる業務となるように発展を期待するところです。
しf




