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雑記

特定行為研修ってどんなもの?

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2015年から特定行為に係る研修制度(以下特定行為研修)ができたのをご存知でしょうか。

私自身も特定行為の研修を履修し「特定看護師」として勤務をしています。

しかし、特定看護師の数はまだ全国的にも多くはありません。このページでは特定行為とは何ができるのか、どんなことを行っているのか自身の状況を踏まえて紹介します。

特定行為研修とは

まず特定行為とは厚生労働省のホームページで以下のように定義づけられています。

特定行為は、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる次の38行為です。

引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000050325.html#:~:text=%E7%89%B9%E5%AE%9A%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%AF%E3%80%81%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%81%AE,%E3%81%A8%E8%AA%AD%E3%81%BF%E6%9B%BF%E3%81%88%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

簡単にいうと今まで医師しかできなかった38項目医行為が看護師もできるようになるというものです。

どのようなことが行えるかというと次の手技が行えるようになります

※38行為を個人的にまとめて分かりやすく表記しています。

  1. カテーテル・ドレーンの抜去や挿入、交換に関するもの
    • 中心静脈カテーテルの抜去
    • ドレーンの抜去(創部・心嚢・腹腔・胸腔ドレーン)
    • PICCカテーテルの挿入
    • 動脈ラインの挿入
    • 動脈からの直接採血
    • 気管カニューレの交換
    • 胃瘻もしくは腸瘻カテーテルまたは胃瘻ボタンの交換
    • 膀胱瘻カテーテルの交換
  2. 創部処置に関するもの
    • 褥瘡・創傷のデブリードマン
    • V.A.C療法の実施と管理
  3. 点滴の管理、薬剤の投与に関するもの
    • 持続点滴の流量・電解質の調整
    • 持続点滴中の降圧剤・利尿剤・カテコラミンの投与量の調整
    • インスリン投与量
    • 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時投与
    • 抗けいれん剤の臨時の投与
    • 抗精神病薬の臨時の投与
    • 抗不安薬の臨時の投与
    • 薬剤(抗がん剤含む)が血管外漏出時のステロイド薬の局注及び投与量の調整
    • 硬膜外カテーテルからの薬剤投与と投与量調整
  4. 人工呼吸器に関するもの
    • 挿管チューブの位置調整
    • 人工呼吸器・NPPVの設定変更
    • 人工呼吸器からの離脱
    • 人工呼吸管理中の鎮静薬の投与量の調整
  5. ペースメーカー、体外循環に関するもの
    • 一時的ペースメーカの操作及び管理
    • 一時的ペースメーカリードの抜去
    • 経皮的心肺補助装置の操作及び管理
    • 大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
    • 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理

以上の手技については病態の適切な理解と判断が求められるため、研修を受けてスキルとして身につけたらやってもいいよという制度です。

特定行為研修が行われるようになった背景

医師の働き方改革により、一部医行為を看護師が実施できるようにカリキュラムが作成されれました。

医師の業務量が多く問題となり、医行為の一部を看護師が行えるようタスクシフトすることが制度が始まったきっかけです。

また、急性期病床を減らし在宅医療の推進を図る日本の現状があり、在宅領域において医師または歯科医師の判断を待たずに一定の医行為ができる看護師を確保したいとの背景もあります。

特定行為研修を受けるメリットとデメリット

特定行為研修を受けて感じたメリットとデメリットを紹介します。

特定行為研修を受けるメリット
  • 基本的なところから研修を受けるため知識やスキルが身につく
  • 看護師として実践できる幅が広がり、キャリア発展のきっかけとなる
  • 医師の視点を学ぶことができ、チーム医療をより意識して考えられる
  • 自身やモチベーションの向上につながる
  • 研修で得た知識が看護ケアの質向上につながる
  • 研修で得た知識・スキルを看護チーム内で共有することで看護チームの実践能力が向上する
  • 特定看護師の所属が診療報酬加算の要件となっている項目がある
  • 特定行為研修を受けていると給料が増える施設もある
特定行為研修を受けるデメリット
  • 研修費用がかかる(施設と研修区分により費用は異なる)
  • 研修期間が1年間であり、組織の人員が研修期間は少なくなる
  • 施設外で研修を行う場合があり、その際は交通費や生活費が余分にかかる
  • 勤務しながら研修を受講する場合、プライベートの時間が極端に減る
  • 医行為を行うためリスクを負うこととなる
  • 通常の看護業務に加えて医行為を行うことで業務負担が増える(施設による)
  • 施設によっては働き方が変わる可能性がある。(診療科に所属するなど)

メリット・デメリットについては施設で研修を行っているか、研修費用負担があるか、組織の研修への理解、特定看護師がどのように施設内で活動しているかによって変わってきます。

勤務しながらの受講になると、研修のボリュームが結構ありますのでかなり辛いかと思います。

私は自施設で研修を受けましたが、研修費用の補助があり、実習も勤務時間をあててもらえたので優遇されている職場だと思っています。

研修のスケジュール

研修期間は1年間です。大半がe-learningによる動画講義を受けます。動画講義は施設により研修生が一緒の時間で受けるところもあれば、個別に受講するところもあります。

e-learningは放送大学や学研などいくつかの企業や団体が研修プログラムを提供しています。

以下は私が研修を受けたときのスケジュールです。※6区分8行為の研修

4月〜9月 e-learning
共通科目(6科目):252時間
・病態生理学        31時間
・臨床推論         45時間
・フィジカルアセスメント  45時間
・臨床薬理学        45時間
・疾病・臨床病態概論    41時間
・医療安全学/特定行為実践  45時間
10月〜12月 e-learning
区分別科目(6科目):83時間
・呼吸器(気道確保に係るもの)   11時間
・呼吸器(人工呼吸療法に係るもの) 19時間
・動脈血液ガス分析関連       17時間
・栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 12時間
・術後疼痛管理関連         9時間
・循環動態に係る薬剤投与関連    13時間
12月〜3月
臨地実習
・指導医のもと手技実施
・患者さんへ実習実施の同意の取得
・1科目10症例の実施
・症例実施毎の症例レポート作成

学習時間は規定時間と前後の復習などの時間も必要だと考えていたほうが良いです。実習期間では施設や指導医により違いますが、症例ごとにレポートをびっちり2〜3毎を記載して提出していました。

また区分によりOSCE(手技実施テスト)があります。テストに向けた手技練習や準備が必要となります。

研修にかかる費用

研修に係る費用はまちまちです。2022年現在募集を行っている施設の例を次にあげます。

<筑波大学附属病院>

入講料¥10,000
共通科目受講料¥450,000
区分別授業料(1区分)¥約30,000~140,000

<水戸済生会総合病院>

受講審査料¥20,000
受講納付金¥30,000
共通科目受講料¥380,000
区分別授業料(1区分)¥約40,000~140,000

<聖隷福祉事業団>

共通科目受講料¥240,000
区分別授業料(1区分)¥約50,000~140,000

特定行為研修にはパッケージ研修があり、パッケージだとお得になる傾向があります。

  • 在宅・慢性期領域パッケージ(4区分5行為)
  • 外科術後病棟管理領域パッケージ(12区分15行為)
  • 術中麻酔管理領域パッケージ(6区分8行為)
  • 救急領域パッケージ(5区分9行為)
  • 外科系基本領域パッケージ(7区分7行為)
  • 集中治療領域パッケージ(6区分10行為)

特定行為の実践

特定行為の実践は手順書に基づいて行われます。施設ごとに手順書が存在しており、どのような基準で特定行為を行うかは施設によって違います。

引用元:https://www.nurse.or.jp/nursing/education/tokuteikenshu/portal/about/

上記のように医師がすぐに来れない場面、いないときに必要な手技をタイムリーに行えることが強みです。

実際に自施設では、医師の指示がある前に、患者さんの状態を日々観察しながら介入の必要があるとこちらから特定行為の手技実施を提案して手技を行うことがほとんどです。

診療科に属している場合は、特定行為以外の手技についても実施リストを作成し、医師の直接指示のもと医行為を実施しているケースがあります。

いずれにせよまだ特定看護師数は少なく、全国的にも特定看護師を活用できている施設は多くないのが実情であると考えています。

まとめ

厚生労働省は2025年までに10万人以上の養成目標を立てていますが、2022年3月末では目標のわずか約2%にとどまっています。目標に届かない理由として費用の負担、人手不足の中研修に推薦できない、そもそも医師のタスクシフトをする余裕が看護師にないなどの理由が考えられます。

その他理由として自施設の後輩に聞いたところ「私ができるようになると思えない」と自信がないことを理由としてあげていました。もし研修に興味があって、自信がない方がいましたら1年間基礎的なところから研修を受けますし、医師の視点を学ぶことで医師とのやり取りや看護ケアを行う中で見方が大きく違ってきますので思い切って受講することをおすすめします。

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ABOUT ME
azuki
某大学病院の一般病棟・集中治療室で十数年の勤務経験あり。特定行為に係る研修制度を履修。休日は子どもたち3人と遊んでいます。 このブログでは広く浅くをパッと調べる目的で始めました。休憩時間や通勤時間にでも見てもらえるツールになればと、不定期更新を続けたいと思っています。 また、今やネットサイトやYouTubeからでも手軽に勉強できる時代になりました。分かりやすいと思ったものはどんどん紹介していこうと思います。

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