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薬剤関連

抗血栓療法について

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今回は血液をサラサラにする薬についてです。実は抗凝固療法と抗血小板療法は目的も作用も違います。血液が固まりにくくなる治療といった抽象的な理解にはならないように、抗血栓療法についてまとめます。

血液が凝固する仕組み

血液凝固のおさらいです。血液凝固は一次止血と二次止血があり、一次止血は血小板が血管損傷部位に凝集しておこります。二次止血はフィブリンが凝集した血小板に網をかぶせるように覆って止血をします。

血液が凝固する仕組みを血液凝固のカスケードと言います。

内因系要素(コラーゲンとの接触)と外因系要素(血管損傷)によって引き起こされる化学反応で血栓を形成します。主に肝臓で凝固因子が形成されていき、その過程でビタミンKとCa²⁺が必要となります。抗血栓、抗凝固療法はこのいずれかの作用を阻害して治療します。

抗血栓療法とは

抗血栓療法とは血栓を作らせないまたは既にある血栓を溶解する治療法です。

抗血栓療法には実は3つありますが、それぞれの治療と適応疾患は違います。

種類役割適応疾患
抗血小板薬動脈の血栓を防ぐ(白色血栓)狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)・慢性動脈閉塞症
抗凝固薬静脈の血栓を防ぐ(赤色血栓)非弁膜症性心房細動・深部静脈血栓症(DVT)・肺塞栓症(PE)・心臓弁置換術後
血栓溶解薬できた血栓を溶かす急性期の脳梗塞(発症後4.5時間以内)・急性心筋梗塞(発症後6時間以内)・肺塞栓症

抗血小板薬の役割と種類

血小板が集まるのを防ぐことで、動脈の血栓(白色血栓)を予防します。
代表的な抗血小板薬を以下にまとめました。

薬の種類代表薬特徴
COX-1阻害薬バイアスピリン🄬一般的に使われる。消化管障害のリスクあり。
急性発症の初回内服時は嚙み砕いて内服する。
P2Y12阻害薬プラビックス🄬
エフィエント🄬
ステント留置後はアスピリンと併用される(DAPT)。
プラビックス🄬のみ脳梗塞後の再発抑制・末梢動脈の血栓予防に適応あり。
ホスホジエステラーゼ(PDE3)阻害薬プレタール🄬脳梗塞後の再発抑制・慢性動脈閉塞症に保険適応。
血管拡張作用あり。
心拍増加作用があり心不全患者には慎重投与。

抗血栓療法を2剤内服(アスピリン+P2Y12受容体拮抗薬)する治療法をDAPT(ダプト)と表現し、1剤のみをSAPT(サプト)と表現します。

※冠動脈ステント治療後はベアメタルステントであれば1ヵ月、薬剤溶出性ステントでは半年から1年ほど抗血栓薬の内服が必要となります。

※脳梗塞急性期では21日間を目安に投薬されます。(脳卒中ガイドラインより)

抗凝固薬の役割と種類

血液が固まるのを防ぎ、静脈の血栓(赤色血栓)を予防します。
代表的な抗凝固薬を以下にまとめました。

薬の種類代表薬特徴
ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)ワーファリン🄬効果が安定するまで時間がかかる。PT-INR管理が必要。
直接経口抗凝固薬(DOAC)プラザキサ🄬
イグザレルト🄬
エリキュース🄬
リクシアナ🄬
ワルファリンに比べて使いやすいが、腎機能・体重で調整が必要。
リクシアナ🄬は整形外科術後のDVT予防にも保険適応あり。

ワルファリンは血液検査(PT-INR)で管理が必要。ビタミンKの影響を受けるため、食事にも注意します。(納豆禁止)

※DOACはワルファリンより使いやすく、定期的な血液検査が不要です。

DVT予防としての抗凝固療法

下肢整形外科術後・開腹術後・産科術後はハイリスクとして抗凝固療法が推奨される。

  • 低用量未分画ヘパリン(ヘパリンカルシウム🄬):8~12時間毎に5000単位皮下注
  • ワルファリン(ワーファリン🄬):PT-INR1.5~2.5目標
  • エドキサバン(リクシアナ🄬):腎機能、体重、併用薬を考慮し量を調整
  • エノキサパリン(クレキサン🄬):2回/日皮下注
  • フォンダパリヌクス(アリクストラ🄬):1回/日皮下注

弁置換術後の抗血栓療法

弁膜症の弁置換術後は弁自体が異物であり抗血栓療法が必須となります。

  • 機械弁:ワルファリンを永続的に内服する
  • 生体弁:ワルファリンを3ヵ月~6ヵ月間、出血リスクなどに応じて内服する。
  • TAVI(経カテーテル大動脈弁置換)ではDAPTが推奨されている。

抗血小板薬+抗凝固薬の併用(トリプル療法)

心房細動(af)患者がPCIを受けた場合など、
「抗凝固薬+抗血小板薬2種類」の3剤を短期間使うケースがあります。

しかし、出血リスクが高いため、最近では2剤に減らすことが推奨されています。
消化管出血を防ぐため、PPI(プロトンポンプ阻害薬)の併用も考慮されます

おわりに

「血液をサラサラにする薬」の違いについてのまとめでした。周術期においてはこれらの薬剤を中止しなければならないですし、必要によりヘパリンへ置換(半減期が短くコントロールしやすい)することがありますね。また、ステント治療や弁膜症治療後は必ず抗血栓薬が開始されますが、その目的の理解が深まれば幸いです。

YouTubeより以下動画なども参考にさせていただきました。

ナースの頂きチャンネルさん:2つの違いってなに?】抗血小板薬と抗凝固薬の使い分けを学ぼう!

ドクターくりつべの実臨床深掘り【救急・集中治療・循環器】さん

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ABOUT ME
azuki
某大学病院の一般病棟・集中治療室で十数年の勤務経験あり。特定行為に係る研修制度を履修。休日は子どもたち3人と遊んでいます。 このブログでは広く浅くをパッと調べる目的で始めました。休憩時間や通勤時間にでも見てもらえるツールになればと、不定期更新を続けたいと思っています。 また、今やネットサイトやYouTubeからでも手軽に勉強できる時代になりました。分かりやすいと思ったものはどんどん紹介していこうと思います。

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